「早くして!」「もう知らないよ!」「なんでできないの?」
忙しい保育の現場では、子どもに動いてほしいあまり、つい強い言葉をかけてしまうことがあります。
もちろん、保育士も人間。毎日完璧に優しい声かけをするのは簡単ではありません。
大切なのは、「言ってしまった…」と自分を責めることではなく、日々の声かけを振り返り、少しずつ言い換えていくことです。
こども家庭庁の資料でも、子どもの人格を尊重しない関わりや、物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけなどは、人権擁護の観点から「良くない」と考えられる関わりとして整理されています。
今回は、保育現場でついやってしまいがちな「NGな声かけ」と、子どもを尊重した「言い換え」を10個紹介します。
①「早くして!」
着替えや片付け、給食の時間など、時間に追われているとつい出てしまう言葉です。
NGな声かけ
「早くして!」
言い換えるなら
「あと5分でお片付けだよ。何から片付けようか?」
「時計の針がここまで来たらお片付けしようね」
「先生と一緒にやってみようか」
「早くして」と急かすだけでは、子どもは「何をどうすればいいの?」と戸惑うことがあります。
具体的な行動を伝えることで、子どもが動きやすくなります。
②「なんでできないの?」
大人からすると簡単に見えることでも、子どもにとっては難しいことがあります。
NGな声かけ
「なんでできないの?」
言い換えるなら
「どこが難しい?」
「先生と一緒にやってみる?」
「どうしたらできそうかな?」
「できない理由」を責めるのではなく、困っているところに目を向けることが大切です。
③「泣かないの!」
泣いている子を早く落ち着かせたいときに言ってしまいがちです。
NGな声かけ
「もう泣かないの!」
言い換えるなら
「悲しかったんだね」
「悔しかったんだね」
「先生ここにいるよ」
子どもにとって「泣くこと」は気持ちを表現する大切な方法の一つ。
まずは気持ちを受け止めてから、次の行動へつなげていきましょう。
④「いい加減にして!」
何度も同じことを繰り返されると、保育士もイライラしてしまうことがあります。
NGな声かけ
「もう、いい加減にして!」
言い換えるなら
「先生は今、困っているよ」
「今は○○をする時間だよ」
「どうしたらみんなが楽しく過ごせるかな?」
感情をぶつけるのではなく、保育士自身の気持ちや、してほしい行動を具体的に伝えるようにします。
⑤「そんなことしたら嫌われるよ」
子どもを動かすために、「嫌われる」という言葉を使ってしまうこともあります。
NGな声かけ
「そんなことしたらお友達に嫌われるよ」
言い換えるなら
「○○ちゃんは今、どう思ったかな?」
「お友達はどんな気持ちだったと思う?」
「一緒に遊ぶにはどうしたらいいかな?」
「嫌われるよ」と脅すのではなく、相手の気持ちや人との関わり方を考えられるようにすることがポイントです。
⑥「○○ちゃんはできるのに」
子ども同士を比べてしまう声かけです。
NGな声かけ
「○○ちゃんはできているよ」
「みんなできているのに」
言い換えるなら
「昨日よりできるようになったね」
「ここまでできたね」
「次はどこまでやってみようか?」
子どもの成長には、それぞれのペースがあります。
他の子どもとの比較ではなく、その子自身の成長を見ることを意識しましょう。
⑦「ダメ!」
危険な場面などでは、瞬間的に「ダメ!」と言う必要がある場合もあります。
ただし、何でも「ダメ」で終わらせてしまうと、子どもは「なぜダメなのか」が分からないことがあります。
NGになりやすい声かけ
「ダメ!」
「触らない!」
「走らない!」
言い換えるなら
「ここは危ないから歩こうね」
「これは先生と一緒に使おうね」
「お部屋では歩いて遊ぼうね」
特に危険を伴う場面では、まず安全を確保することが最優先。
そのうえで、「何をしてはいけないか」だけではなく「どうすればいいか」まで伝えると分かりやすくなります。
⑧「言うことを聞かないなら○○するよ」
子どもを動かすために、罰や脅しを使ってしまうケースです。
NGな声かけ
「言うこと聞かないなら遊ばせないよ」
「片付けないなら捨てちゃうよ」
「言うこと聞かない子は知りません」
言い換えるなら
「今は片付ける時間だよ。一緒にやろう」
「まだ遊びたいんだね。あと1回遊んだら片付けよう」
「どうしたら片付けられそうかな?」
こども家庭庁の資料でも、強要するような関わりや脅迫的な言葉がけは、人権擁護の観点から避けるべき関わりとして挙げられています。
⑨「もう知らない!」
子どもとの関係を切ってしまうように受け取られる言葉です。
NGな声かけ
「もう知らない!」
「先生はもう助けないよ」
言い換えるなら
「先生はここにいるよ」
「落ち着いたらお話ししようね」
「どうしたかったのか、先生に教えて」
子どもにとって保育士は、安心して気持ちを出せる存在であることが大切です。
「先生は自分を見捨てない」という安心感につながる言葉を意識しましょう。
⑩「いい子にして!」
保育現場では非常によく使う言葉ですが、「いい子」の基準は大人側にあります。
NGな声かけ
「いい子にしててね」
「いい子にできたら○○してあげる」
言い換えるなら
「今は静かに待とうね」
「椅子に座って待とうね」
「お友達のお話を聞こうね」
「いい子」という曖昧な言葉ではなく、具体的にどんな行動をしてほしいのかを伝えることがポイントです。
「NGな声かけ=悪い保育士」ではありません
ここは、ぜひ伝えたいところです。
保育士も毎日、時間に追われています。
着替え、排泄、食事、午睡、片付け、行事の準備、保護者対応、書類……。
余裕がなくなれば、つい強い口調になってしまうこともあります。
だからこそ、
「言ってしまった自分はダメな保育士だ」
と考えるのではなく、
「次はどんな言葉に言い換えよう?」
と考えることが大切です。
保育所保育指針解説でも、子どもの表情や姿をよく観察し、その場面に適した言葉をかけることや、応答的な関わりの大切さが示されています。
保育士の声かけを変える3つのポイント
①「否定」より「してほしいこと」を伝える
「走らない!」
ではなく、
「歩こうね」
「触らない!」
ではなく、
「先生と一緒に使おうね」
というように、具体的な行動を伝えることを意識します。
②「できていないこと」だけを見ない
「まだできていない」
ではなく、
「ここまでできたね」
「昨日よりできるようになったね」
と、その子の変化に目を向けます。
③ 子どもの気持ちを一度受け止める
「まだ遊びたい!」
と言われたとき、
「もう終わり!」
だけで終わらせるのではなく、
「まだ遊びたかったんだね」
と気持ちを受け止める。
そのうえで、
「でも、今から給食だから片付けようね」
と伝える。
気持ちを受け止めることと、何でも子どもの言う通りにすることは違います。
「気持ちは受け止める。でも必要なルールは伝える」
このバランスが大切です。
まとめ|今日の声かけを1つだけ変えてみよう
保育士がついやってしまいがちなNGな声かけを10個紹介しました。
- 「早くして!」
- 「なんでできないの?」
- 「泣かないの!」
- 「いい加減にして!」
- 「そんなことしたら嫌われるよ」
- 「○○ちゃんはできるのに」
- 「ダメ!」
- 「言うことを聞かないなら○○するよ」
- 「もう知らない!」
- 「いい子にして!」
全部を一度に変える必要はありません。
まずは、自分が一番よく使っている言葉を1つだけ選んで、言い換えてみる。
それだけでも十分です。
「早くして!」と言いそうになったら、
「次は何をする時間かな?」
「先生と一緒にやろうか」
に変えてみる。
小さな言葉の変化が、子どもとの関係を変えていくきっかけになるかもしれません。
明日からの保育で、ぜひ一つ試してみてくださいね。
関連記事
褒める保育とは?子どもの自己肯定感を育てる関わり方と実践のコツ
「保育士の保護者対応のコツ|信頼関係を築く伝え方と困ったときの対応方法」


コメント